古疵を舐め合っている老いた猫

もの忘れ昔のことは憶えとる

門前まで来て携帯で用達す

難聴の夫が不足の腰まがり

退院が近づき妻の布団乾す

鵯と百舌鳥が萬両食いつくす

割勘で気楽な同志長続き

日向ぼこ昔の話ばかりする

内緒だといった噂が噂呼ぶ

旬の味をわからなくしたハウス物

一日がもったいないと蝉が鳴く

糞害もきにはならないつばめの子

耐用年数過ぎた愛車とわが夫婦

要領がよすぎて信頼今一つ

看取られるこちらが看取る破目になる

筍に米糠そえて宅急便

あれこれと仕事残して年終わる

尊厳死を妻子に頼む達者な日

急患か深夜ナースの疾い足

今日もまた生かされているよい目ざめ

隠ぺいをトップはすべて知っており

年毎に亡父(ちち)の仕草に似るという

肩書きが邪魔して本音出てこない

嘘つかぬ野菜に今日も水をやる

久方の鉛筆削る肥後守

同宿者入歯探しで大騒ぎ

 章 作品集